遺言とは
- 相続紛争防止のためには遺言を書いた方が良いとよく書かれていますが、 そもそも 「遺言」って何なのかが分からない方も多いと思います。それは、「遺言」が、一般的に「遺書」と混用されているからかもしれません。
遺言の意味
- 1.「死に際に言葉を残すこと。先人が生前に言ったこと。」という意味です。
- 2.「人が死亡後に法律上の効力を生じさせる目的で、遺贈、相続分の指定、相続人の廃除、認知などに着き、民法上、一定の方式を従ってする単独の意思表示」です。
- 1の意味の「死に際の言葉」を書面に書きとどめたものがいわゆる「遺書」です。
- 2は、死後の財産関係・身分関係に関する処分を行なう法的な文書としての「遺言」になります。
遺言の種類について
- 遺言には大きく分けて自筆証書遺言と公正証書遺言とがあります。
自筆証書遺言の特徴
- 自筆証書遺言とは、遺言書の内容・日付・氏名が全て自筆で書かれ、押印をする遺言のことです。 自筆証書遺言は、紙とペンと印鑑があればすぐにでも書くことが出来ますし、特に費用もかからないので、気軽に作成することができます。
- しかし、簡単に作れる反面、要件を欠いて無効になることもありますし、遺言の内容に不備があって却って紛争を招いてしまうケースもあります。 また、遺言を 発見した場合には、検認と言って、裁判所で遺言の内容や形状を確認する手続をしないといけないという手間があります。
公正証書遺言の特徴
- 公正証書遺言とは、公証証書(公証人が作成する書面)で作成をする遺言のことです。 公正証書は、専門家が作成に関与するので、無効になったり、内容に不備があって後で問題になると言ったケースは少ないです。また、検認手続も不要ですし、紛失のおそれもありません。
- 公証人役場とのやり取りが必要になりますし、戸籍などの書類も必要になります。(公証人とのやり取りを含めて弁護士に頼むこともできます) また、公証人に支払う費用もかかってきてしまいます。作成費用は遺産の金額や相続人の人数により異なります。
遺言の必要性
- 遺産分割事件の遺産額についてまとめた統計によると、遺産額が5000万円以下の事件が74%を占めています。 そのうち、1000万円以下の遺産額で家庭裁判所にいくまでの紛争になった事件が約30%もあります。
- 5000万円という遺産だと、内訳は自宅不動産と老後資金の余りという組み合わせが多いのですが、不動産が1つあれば、揉めてしまう可能性が充分にあります。 実際に、相続紛争を多くなってきており。、家庭裁判所に持ち込まれた遺産分割事件の数は、昭和60年度は6,176件なのに対し、平成22年度には1万 3,597件となっており、 この25年間で実に2倍以上にも増加しています。「争族」と表現されることもありますが、相続が紛争になった場合、親族を巻き込んでの感情的な対立になるケースが増えています。
- 遺された家族が、相続紛争という不毛な争いをしないためにも、財産の多い少ないに拘らず、きちんとした遺言を作成しておくことが、遺された家族に対する愛情かもしれません。